戦後間もない1946年、光文社から月刊誌「少年」が創刊されましたが、その月刊誌に1956年から横山光輝が連載を開始したのがロボット漫画「鉄人28号」です。戦争中に開発された秘密兵器を少年探偵・金田正太郎がリモコンで操り平和のために戦う物語で1963年のアニメ化で爆発的な人気を獲得しました。
昭和の子供たちにとってロボットとは未来そのもので、空を飛び、悪と戦うロボットはその後も、マジンガーZ、機動戦士ガンダム、そして機械の体を持ちながら人間の心を持つロボコップなどロボットは、「人類の夢」として描かれてきました。
当時の子供たちは、ロボットに恐怖よりも希望を見ていました。重い荷物を運び、危険な場所へ行き、人間を助けてくれる存在、未来とは便利で明るいものだと多くの人が信じていた時代だったのです。

しかし科学技術は夢だけでは終わりません。便利な道具ほど、やがて軍事利用されるという歴史を人類は何度も繰り返してきました。飛行機は人を遠くへ早く運ぶ乗り物でしたが、やがて爆撃機へと変わり、未来のエネルギーといわれた原子力は同時に核兵器という恐ろしい存在をも生み出したのです。
大相撲の土俵にたつ行司。その中でも最高位である立行司は、今でも腰に短刀を差しています。この短刀には「差し違えをした時には切腹をして責任をとる覚悟」という意味があると言われています。
もちろん、実際に切腹する制度があったわけではありません。しかしこの話が何百年もの間語り継がれてきた背景には日本人独特の「責任」という考えがあると思います。相撲の歴史は古く、戦国時代にはすでに武士たちの文化と深く結びついていたようです。当然、当時審判を務めた行司役は武士であったため刀を差していました。
相撲が庶民文化として発展した江戸時代、廃刀令によって刀を持てなくなった時も最高位の立行司は刀を持つことが許されました。つまりこの短刀は単なる飾り物ではなく「最後の責任は人間がとる」と言う時代の象徴でもあったのでしょう。

しかし時代は変わりました。1969年、大相撲はビデオ判定が導入されます。きっかけは、横綱大鵬の連勝記録を巡る大誤審で相撲協会は映像による確認制度を導入したのです。これは世界的に見てもかなり早い決断で、米国のNFLが導入したのは1980年代、大リーグが本格導入したのはつい最近のことです。
多くのスポーツが人間の判断で行なわれていたものが人間の判断を機械が補助する時代になりました。野球にはAI判定、工場ではロボットそして軍事の世界でも、AIによる無人兵器の開発が進んでいます。
鉄人28号の時代人々はロボットを夢の機械とみていました。しかしその便利さと正確性を求めた結果人間は少しずつ自らの判断を機械へ委ね始めているのでしょう。鉄人28号の主題歌歌詞「敵にわたすな大事なリモコン」は今にいらなくなる時代が来るかもしれません。


