ビールの泡の向こうに、八月の光と影

ビールと白い泡

今年の夏も暑い日が続きました。8月に入っても全国各地で35度を超える猛暑日が続き、こんな時には冷えたビールを一杯、と思う方も多いでしょう。

銀座7丁目、中央通りに面して建つ「ビヤホール ライオン」。昭和9年、1934年に誕生したこの店は、現存する日本最古のビヤホールとして知られています。高い天井、大きな柱、正面を飾るガラスモザイク。昭和の初めから変わらない空間で飲むビールには、単なる喉の渇きを潤すだけではない、どこか懐かしい味わいがあります。

ビヤホールライオン 銀座七丁目店

日本のビール業界を長く支えてきたのは、キリン、サッポロ、といったメーカーにサントリーも加わり、それぞれが競い合いながら、ラガー、ドライ、黒ラベル、プレミアムビールと時代に合わせて様々な味を生み出してきました。

一方、世界のビール三大ブランドはバドワイザーで有名な、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)、ハイネケン(オランダ)、チャイナ・リソース・スノー・ブリュワリーズ(中国)、で、この三大メーカーが生産量ベースで世界の50%を占めています。いずれにしても仕事を終えた後の一杯、夏祭りや花火を見ながらの一杯、ビールや酒は、昔から人と人との間を和ませ、楽しい時間を作るものでもありました。

しかし「八月」という月を振り返ると、楽しい夏の顔とは正反対の忘れてはならない出来事がいくつも刻まれています。昭和20年8月6日午前8時15分、広島に原子爆弾が投下されました。そのわずか3日後の8月9日午前11時2分には長崎にも原子爆弾が投下されました。さらに8月15日には終戦を迎えます。日本人にとって八月は戦争と平和について改めて考える月でもあります。

長崎平和祈念像

そして昭和60年、1985年8月12日、日本航空123便が群馬県上野村の山中に墜落し、乗客、乗員524人のうち520人が亡くなるという大きな航空事故が起きました。楽しいはずのお盆の帰省の途中で突然断たれた多くの人生。41年経った今も、決して風化させてはならない事故です。さらに今年の8月25日、もう一つの悲しい事故から20年を迎えました。

2006年8月25日、福岡市の海の中道大橋で、飲酒運転の車が家族5人の乗った車に衝突し、車は海に転落、4歳、3歳、1歳の幼い3人の兄弟が亡くなりました。今年、事故から20年を迎え、福岡ではあらためて飲酒運転撲滅を願う集会が開かれました。考えてみれば、酒ほど「光と影」をはっきり持つものは少ないのかもしれません。

銀座ライオンで仲間と笑いながら飲む一杯は、人を幸せにします。仕事を終えて家族や友人と囲む一杯も、人生の楽しみの一つでしょう。しかしその一杯を飲んだ後にハンドルを握れば、同じ酒が一瞬にして人の人生を奪うものに変わってしまいます。酒が悪いのではありません。酒をどう扱うかを決めるのは、最後は人間です。

冷たいグラスの中に立ちあがる白い泡。その向こう側には楽しい夏があります。しかしその楽しさを守るためには守らなければならない一線があることを忘れてはならないと思います。