世界三大音楽祭の一つチャイコフスキー国際コンクールが7月1日に終了しました。ロシアのウクライナ侵攻に伴いこの4年に一度の大会も西側諸国にロシア文化をボイコットする動きがあり世界的な連盟から除名されました。
そもそもチャイコフスキー音楽祭は東西冷戦のさなかの1958年から4年に一度、旧ソ連が自国の音楽レベルの高さを世界に誇示するために開催されたコンクールと言われています。
現在ではピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽、さらに楽器部門がありますが、当初はピアノとヴァイオリン部門だけでした。そのためこの二部門の優勝者はクラシック音楽歴史の中でも超一流と呼ばれる顔ぶれになっています。
ソ連が威信をかけて開く大会だけにソ連の優勝者が多く不公平だと言われた不名誉な時代もありましがその記念すべき第1回のピアノ部門優勝者はなんと米国人のヴァン・クライバーンでした。演奏曲はチャイコフスキーピアノ協奏曲第一番、ラフマニノフ協奏曲第三番でしたが、演奏後はスタンディングオべーションが8分間も、続いたとか!
審査員が審査終了後に時の最高指揮者フルシチョフ氏に『アメリカ人に優勝させてもよいか』と聞いたところ、『彼が一番かと』と聞き『それなら賞を与えよ』と答えた話はあまりにも有名です。当時の政治的な背景を考えればとても驚くべき事でした。
彼は一躍アメリカの英雄に、帰国した際はニューヨークで盛大なパレードが行われました。演奏したチャイコフスキーピアノ協奏曲はクラッシック会で世界初のミリオンセラー1958年にはグラミー賞を受賞しています。
1962年にはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが創設されました。因みに2009年の大会優勝者はあの盲目のピアニスト辻井伸行さんです。
クライバーン氏は世界各国に招かれ演奏しましたがいつもチャイコフスキーとラフマニノフを望まれ為、その才能を発揮せずに2013年永眠されました。スポーツと芸実に政治を持ち込むことは許されないことですが、現在よりも厳しい東西関係の折アメリカ人を優勝させた旧ソ連の政治家の英断は素晴らしいものがあります。現在の東西の政治家に爪の垢でも煎じて飲ませたいものです。
7月の最後の週はこの西側諸国である欧米各国、そしてわが国の中央銀行の政策発表がありました。市場はこの発表を見越して中旬ごろから神経質な展開となりましたが、日銀の政策発表が金融緩和策からの脱却となり世界的に利上げの方向に足並みをそろえてきたようです。
しかしここで問題になるのが東側諸国、中国の政策です。中国は今やデフレの世界に入ったといわれており中央銀行がどう動くかは不透明な世界ではっきりしません。最も旧ソ連時代は鉄のカーテンと言われ全く見えない世界でしたからそれに比べれば世界経済、金融の世界は透明になっていると思われます。
第一回チャイコフスキーコンクールの時のような英断を下せる政治家が東西に現れるのはいつのことでしょうか?さて先月の市場の動きです。前述したように各国の政策発表を控え神経質な市場の動きが続きましたが、全体として再び円安方向に向かうように見られます。八月は145円台での展開とみられますが果たして日銀は介入するでしょうか?